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「誇張従属形式」

JUGEMテーマ:学問・学校「客観的処罰条件」について書いたので、ついでに、「共犯の従属性」における「誇張従属形式」の話を少ししておきましょう。

 

Wikipediaの「要素従属性」を見たところ、未だに、「誇張従属形式」(Wikiでは「誇張従属性」と表記されていますが)について、「共犯が成立するためには、正犯に構成要件該当性、違法性、有責性に加えて処罰要件まで備える必要があるという見解。」と書かれていました。訂正を試みたのですが、なぜか、大学からのアクセスはブロックされています。不思議なことです。

 

以前に「共犯の『従属性』について」(立命館法学243・244号)で書いたように(http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/95-56/mathumiy.htmでも閲覧できます。)、正確な定義は、「共犯の処罰は、・・・正犯の人的資質にも依存するのであり、その結果、人的な事情で刑罰を加重するものおよび軽減するものも、共犯の処罰を加重したり軽減したりする。」瓧庁蕋 Bestrafung der Teilnahme ist.....abha¨ngig auch von den perso¨nlichen Eigenschaften des Ta¨ters, sodaβ straferho¨hende und strafmindernde Umsta¨nde, die seiner Person anhalten, den Teilnehmer belasten und entlasten.」( M. E. Mayer, Der allgemeine Teil des deutschen Strafrechts, 2. unvera¨nderte Aufl. 1923, S. 391.)というものです。

 

つまり、ここでは、共犯の成立が正犯の処罰条件の従属を必要とするというのではなくて、加減的身分犯(不真正身分犯)では身分のない共犯者も身分のある正犯の刑で処断される共犯形式と定義されているのです。これは、現行刑法の65条2項と反対の考え方だということになります。したがって、現行刑法は、この誇張従属形式を採用していません。

 

しかし、Wikiにある定義だと話は異なります。共犯の処罰が正犯の客観的処罰条件の従属を必要とするのは、むしろ当然のことで、したがって、現行刑法は、むしろ、この「誇張従属形式」を採用していることになります。必要としないのは、「一身的刑罰阻却事由」の不存在のみです。

 

私の知るところでは、たとえば団藤重光先生は、このような定義を用いていませんでした。そこでは、「共犯の可罰性は正犯に身分にもかかっていて、一身的な刑の加重減軽の事情も共犯の処罰に影響を及ぼす。」(団藤重光『刑法総論綱要〔第3版〕』(創文社、1990年)384頁)と記されているのです。これは、M.E.マイヤーの定義に忠実なものと言えるでしょう。佐伯千仭先生や平野龍一先生の教科書での定義も同じです。

 

端的に言えば、Wikiの定義は、団藤先生らの世代以後に生じた誤解によるものと思います(失礼ですが、大塚仁先生の教科書には、すでにこの誤解が見られます)。しかも、それは、少し考え、そして原典に当たればわかることなのです。事前収賄罪でいえば、収賄の正犯が公務員にならなかったのに、その手伝いをした者だけが事前収賄罪の共犯として処罰されるというのは、おかしなことでしょう。

 

もちろん、その原因は、「要素従属性」というものが、「共犯成立のための必要条件」だけでなく、「共犯の処断刑への連帯」も含んだ概念となってしまっていたという、M.E.マイヤーの定義自体にもあるのですが、それに気づかないで、誤った定義を世間に再普及するのは、それ自体として、やはり問題だと思います。

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