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追徴する利益のない収賄罪

JUGEMテーマ:学問・学校今年の司法試験も、短答式の結果が6月8日(金)に発表されました。全体の合格率は70パーセント程度なのですが、予備試験受験組が95パーセントを超えている一方で、東大の法科大学院修了生の合格率がよくないということに目を奪われると、大事なことを見落とすことになります。だって、予備試験組は、一度、ほとんど似たような予備試験の短答式を合格した人たちなのですから。同じふるいに二度かけたら、そりゃ通過率は上がりますよ。

 

でも、本日言いたいことは、それではありません。表題にある「追徴する利益のない賄賂罪」が出題されたことです。刑法の短答式第20問の選択肢に「乙は,本件農地を時価でCに売却したのであるから,乙がCから交付を受けた現金700万円は通常の経済取引に基づく不動産の購入代金であり,不正な利益としての賄賂には当たらないので,乙に収賄罪(収受)は成立しない。」というものがあります。問題は、判例によればこれが正しい場合には1を、間違っている場合には2を選びなさいというものでした。そして、正解は2です(http://www.moj.go.jp/content/001259698.pdf)。

 

これは、知る人ぞ知る、最一決平成24年10月15日刑集66巻10号990頁がネタです。しかし、この事件は、元福島県知事の佐藤栄佐久氏が、在任中に県と取引のある企業が弟の経営する会社の土地を時価で買ったときに、かれがこの会社の役員をしていたことに引っかけて、原発企業である東京電力に異議を申し立てる彼を引きずり下ろすために仕組まれた事件だというのが、大方の見方です。そして、その後に、東日本大震災で福島第一原発は、取り返しのつかない事故を起こしました。

 

というより何より、土地を時価で売却した結果、その対価(時価)を得たというだけで賄賂に当たる(しかも親族の経営する会社の取引です。)というのは、常識的に見ておかしいでしょう?そこを、最高裁は、「その実弟である被告人Bが代表取締役を務めるCにおいて,本件土地を早期に売却し,売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があったにもかかわらず,思うようにこれを売却できずにいる状況の中で,被告人両名が共謀の上,同県が発注した木戸ダム工事受注の謝礼の趣旨の下に,Fに本件土地を買い取ってもらい代金の支払を受けたというのであって,このような事実関係の下においては,本件土地の売買代金が時価相当額であったとしても,本件土地の売買による換金の利益は,被告人Aの職務についての対価性を有するものとして賄賂に当たると解するのが相当である。」というのですから、何をかいわんやです。実は、「本件土地を早期に売却し,売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があった」という事実関係自体も、裁判では激しく争われていたのです。

 

実際、「土地の売買による換金の利益」を認定しても、その利益の追徴額はゼロなのです。つまり、経済的には利益はないのです。それを、「売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があった」という程度で賄賂とするなら、これは自白調書の取り方一つで、親族が経営している会社の土地を売った地方自治体の首長を賄賂罪で有罪にできるということです。

 

会計検査院が少なくとも4億は国に損をさせていると述べていた「森友事件」では、大阪地検特捜部は「損害が認定できない」として不起訴処分をしました。これと、追徴額ゼロでの賄賂罪の認定は、両極にあるように思います。

 

それにしても、このような「あざとい」問題を、よく本番で出しましたね。法務省発表では刑法には満点があったようですが、普通の受験生は、こんな判例は知らなくていいですよ。というより、その問題性をよく認識して、いずれ判例変更をさせてください。

 

というか、この最一決平成24年10月15日の論理に対する有効な批判を書け,という問題を、論文式で出せばよいのですが。

| 刑法 | 02:44 | - | - |
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