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「テロ等準備罪」=「共謀罪」論議の盲点

JUGEMテーマ:学問・学校

 昨日4月19日の衆議院法務委員会での論議を報じる新聞記事を見ていた松宮教授から、たぬきが以下のようなレジュメをいただきました。教授によると、文章化している時間がもったいないくらい切迫した問題だから、レジュメのまま掲載してくれということでしたので、そのまま掲載することにします。なかなかおもしろいですよ。

 

「テロ等準備罪」=「共謀罪」論議の盲点(資料)

立命館大学教授 松宮孝明

機ァ屮謄軼準備罪」=「共謀罪」の内容

・法案6条の2が「共謀罪」

 この法案は、その立法理由とされている「国連越境組織犯罪防止条約」(以下、「TOC条約」と記す。)の批准には不必要。にもかかわらず、その成立が強行されれば、何らの組織にも属していない一般市民も含めて、広く市民の内心が捜査と処罰の対象となり市民生活の自由と安全が危機にさらされる戦後最悪の治安立法となる。

 *提案理由

近年における犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴い、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画等の行為についての処罰規定、犯罪収益規制に関する規定その他所要の規定を整備する必要がある。」

 →条約締結は、提案理由のひとつに格下げされている!でも、国内の立法事実はなかったはずでは?

 

供イ修量簑蠹

1.「テロ等準備罪」は「共謀罪」そのもの

(1) 過去の法案との同質性

・「準備行為」:以前の法案にもあったもの。ATMでの現金の払戻し行為等何でも含まれる。腹ごしらえも?

 

(2) 「共謀罪」でないという論拠の虚偽性

・対象犯罪が676から277(?)に:そもそも対象となりえない犯罪(過失犯、結果的加重犯、予備罪など)

・「遂行の計画」:それは「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること」(TOC条約5条1項(a)(i))→極めて広範囲かつ無限定

 *そもそも、「テロ等準備罪」がTOC条約にいう犯罪の合意を処罰するものであるなら、それがこれまでの「共謀罪」法案と「明らかに別物」になることはありえない。

 

2.「組織的犯罪集団」は「テロ組織」に限定されない

(1)  「組織的犯罪集団」の定義

・「組織的犯罪集団」:「三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在」(TOC条約2条 (a))するものであり、「その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう」(法案6条の2第1項)

 →広くテロ組織との関連がないものも含まれる。(→本条約はテロ組織を対象としたものではない!)

 *労働組合や会社などの普通の団体が、テロリズムと関係なくても、277の犯罪のいずれかの遂行を常態とするような組織に性質を一変させた―たとえば争議行為が組織的な威力業務妨害(組織犯罪処罰法3条1項12号)とみなされる―場合、組織的犯罪集団として処罰対象になりうる。

 

(2)  TOC条約が定義する「組織的犯罪集団」≠「テロ組織」

・TOC条約が定義する「組織的犯罪集団」は、「テロ組織」とは異なる「組織的経済的犯罪集団」←「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの」(TOC条約2条(a))

 *広く「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」の組織を含み、かつ、そうでない「テロ組織」を含まない。

 →「組織的犯罪集団が現実的に行う可能性にある犯罪を選んだ」とする4月19日の衆議院法務委員会における林法務省刑事局長の答弁は、「キノコなどの山の幸を無許可で採ったら共謀罪になるのに、海の幸を取ってもならないのはなぜか」と問う山尾議員の質問に対する回答になっていない。なぜなら、マツタケなどのキノコを保安林内で密猟して儲けようとする集団――それも、法案によれば「組織的犯罪集団」――が現実に存在し得ない理由を述べていないから。

 

3.一般市民も処罰対象となりうる

(1) 法案6条の2第2項

 法案6条の2第2項には、「前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ」るなどの「目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も」、そのうちの誰かによって「準備行為が行われたときは、同項と同様とする。」

 →「一般の方が対象となることはない」とする4月19日の衆議院法務委員会における安倍首相答弁は明らかな誤り!

 

(2) 順次共謀と国外犯規定(法案12条)

 ←刑法4条の2:「第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。」→「共謀罪」にも、「条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされている」ときには適用?

 →計画の相談や準備行為がこの世界のどこかで誰かによってなされたことを知らなくても「共謀罪」

 

4.対象犯罪の限定は恣意的

(1) 対象犯罪選択の恣意性

 対象犯罪一覧表(資料参照)

 *なぜか公職選挙法上の組織的な「買収及び利害誘導罪」(公選法221条、222条)や特別公務員暴行陵虐罪、特別法上の(公務員以外の)収賄罪などがない!

 

(2) 条約墨守が不要なことを認める法案

・自民党河野太郎議員のブログより

https://www.taro.org/2017/03/%EF%BD%94%EF%BD%8F%EF%BD%83%E6%9D%A1%E7%B4%84.php 2017年4月20日参照)

 「外務省からの回答は、条約に入るためには、一つたりとも減らすことはできないでした。」

 「その676個の罪の中には、業務上過失致死傷のように故意のない犯罪や爆発物使用未遂のような独立未遂犯罪も含まれていました。故意のない犯罪や未遂で終わる犯行を計画するのは想定しがたいため、本来ならば、こうした犯罪は対象から取り除かれるべきでした。」「また、内乱や爆発物使用のように、すでに共謀、陰謀を処罰する規定があり、新たな法制の対象とする必要がないものもありました。」「交通事故の場合の措置義務違反のように、極めて限定された状況下でのみ成立する罪で、そもそもその実行を計画することが想定しがたいものもありました。」

 「676個を精査すれば、こうした罪は共謀罪の時にも対象から外すことができたはずでした。」

 「外務省も嘘をついていたわけではなく、もし、対象犯罪を削って、批准後にこれでは不充分であるということになったら大変だと、水増ししたままを主張したのでした。」

 →「条約に入るためには、一つたりとも減らすことはできない」という主張は根拠がないことを、対象犯罪を絞った法案自身が前提にしている。

 

5.TOC条約批准という論拠の虚偽性

(1) 本条約の目的

 前述の「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの」(TOC条約2条(a))

 *報道ステーションの本年2月の報道によれば、国連薬物犯罪事務局も、「原則としてテロ集団対象ではない。対象とする犯罪集団は金銭的・物質的利益を目的とした集団だ。テロ集団の犯罪行為は必ずしも金銭的・物質的利益を目的としていない。」とのこと。

 

(2) 国際協力の対象となるような重大犯罪につき、実質的にみて処罰の間隙がなければ、「共謀罪」立法は不要

 *立法ガイド43および51

 立法ガイド43:「加盟国の法案起草者は、単に条約のテキストを翻訳するか、または新しい法律や改正にそれをそのまま含めることを試みるのではなく、条約の意味と精神に焦点を当てるべきである。(National drafters should focus on the meaning and spirit of the Convention rather than attempt simply to translate Convention text or include it verbatim in new laws or amendments.)」

 

 立法ガイド51:「第5条1(a)(i)及び1(a)(ii)の2つの選択的なオプションは、このように、いくつかの国には共謀の法律があり、他方、他の国には犯罪の結社(犯罪者の結社)の法律があるという事実を反映して設けられたものである。これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社の概念のいずれかについてはその概念の導入を求めなくとも、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置をとることを可能とするものである。(The two alternative options of article 5, paragraph 1 (a) (i) and paragraph 1 (a) (ii) were thus created to reflect the fact that some countries have conspiracy laws, while others have criminal association (association de malfaiteurs) laws.)」

 

*アメリカの留保についての外務省の説明

(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/soshiki/boshi_usa.html)

国際組織犯罪防止条約に関し,「米国は一部の州では極めて限定された共謀罪の法制しかないことを理由に留保を付して条約を批准している」との報道がなされたことがあります。

 この米国の留保についての政府の考え方は,以下の通りです。

 

(1)米国は連邦制をとっており,条約締結に当たり,憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から,留保・宣言を行っています。

(2)米国政府より,本条約で犯罪化が求められている行為について,連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答を得ています。

 

(3)このようなことから,米国の留保は本条約の趣旨,目的に反するものではないと理解しています。

 

これに対し,「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保は,「重大な犯罪」の定義を定める条約第2条や,国際性を要件としてはならないと定める条約第34条2の規定に明らかに反するものです。

 これは,上記1.のような,米国が憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から行った留保とは性格が全く異なります。

 「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保を付すことは本条約の趣旨,目的に反するため許されないことは,これまで政府が繰り返し答弁してきたとおりです。

 *しかし、法案は対象犯罪を限定してしまった!→「重大な犯罪」を制限してしまったではないか。

 

(3) 犯罪人引渡、捜査・司法共助にとっての障害としての「死刑」

・条約16条7項:犯罪人引渡しは、請求を受けた締約国の国内法に定める条件又は適用可能な犯罪人引渡条約に定める条件に従う。これらの条件には、特に、犯罪人引渡しのために最低限度必要とされる刑に関する条件及び請求を受けた締約国が犯罪人引渡しを拒否することができる理由を含む。

・国連の犯罪人引渡しに関するモデル条約4条:犯罪人引渡しは、次のいずれかの事情のある場合には、拒否することができる。

 d 引渡しが求められている犯罪が、請求国の法律により死刑を伴う場合。ただし、被請求国が死刑は科されない又は科されたとしても執行されないことを十分と考える保証を請求国が与える場合はこの限りではない。

 →日本が周囲を死刑廃止国で包囲された場合(ロシアはすでに廃止)、法定刑に死刑のある凶悪犯の被疑者がそれらの国に逃亡したなら、事実上処罰を免れることができることとなって、国内の治安維持その他の刑事政策にもマイナス(日本での爆弾テロはやり放題?!)

 例:1993年に殺人の被疑者が死刑廃止国のスウェーデンで拘束された事例

 

6.「テロ対策」という立法理由の欺瞞性

(1) 条約上の「テロ対策」は履行済み

・「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」を始めとする5つの国連条約、および、その他8つの国際条約:すべて対応済み

 

(2) 忘れてはいけない言語問題

 テロを本気で防ぐつもりなら、こんな法律を作っても役に立ちません。もし、テロを本気で防ぐのであれば、「共謀罪」ではなく、警察の組織とセンスを改革する必要があります。「センス」は、どういう組織が本当に危ないのかを察知するセンスです。

 「組織」の改革とは、国際的なテロ組織を相手にするなら日本語や英語だけでは足りないということです。すくなくともアラビア語は必要でしょう。今の日本の警察に、アラビア語を駆使できる人間がどれぐらいいるのですか?警察のリクルート政策からみれば、そんな人間は、却って採用しないでしょう。言い換えれば、日本語しかできない警察組織が用いる「共謀罪」は、日本語を話す人々の共謀しか相手にできないということです。こんなものでテロ対策などと言われたら笑われますよ。

 

7.現行刑法体系に混乱を持ち込む

(1) (共謀)共同正犯その他の共犯との関係

 例 Щ人予備罪の(共謀)共同正犯は2年以下の懲役。でも、情状による刑の免除の余地あり。

 ←→法案の共謀罪では、自らは準備をしなかった者も、刑を免除される余地なく、5年以下の懲役・禁錮?

 *二人以上でなら刑事責任が重くなるから?

 例◆А屮ード偽造」(支払用カード電磁的記録不正作出)の予備は単独でも3年以下の懲役(刑法163条の4)

 ←→法案の共謀罪では、準備をした者も2年以下の懲役・禁錮

 *法案は二人以上の場合、カード偽造予備の刑を引き下げる趣旨か?刑法163条の4の適用があり得るのか?その場合、共謀罪は「カード偽造」予備に吸収されるのか?

 

(2) 中止による刑の減免の余地?

 例:窃盗予備の(共謀)共同正犯は、現行法では罪とならない。窃盗罪の実行に着手した後に中止すれば、刑の必要的減免(刑法43条但し書き)

 ←→法案の共謀罪では、実行の着手前において自らは準備をしなかった者も2年以下の懲役。

 *実行の着手後に中止した場合は、共謀罪での刑は減免されずに残るのか?それとも窃盗の(中止)未遂に吸収されるのか?

 *予備段階で窃盗を中止した(が自首はしていない)者には、従来は刑は科されなかったが、共謀罪ができると、刑の減免の余地なく2年以下の懲役・禁錮で処罰されるのか?

 例ぁЫ害罪の未遂は、現行法では処罰されない。たとえば、人に下剤を飲ませようとする寸前で中止した者等は、傷害未遂で処罰されることはない。ゆえに、傷害未遂が共謀罪を吸収する余地はない。

 ←→法案の共謀罪では、この者等も、刑の減免の余地なく、5年以下の懲役・禁錮で処罰されるのか?それでは、刑を減免することによって犯罪を未遂で終わらせようとする中止未遂既定の趣旨が没却される。

 

(3) 自由刑一本化との関係

 法案6条の2の規定ぶり:懲役刑しかない罪の共謀に禁錮刑を科し、あるいは禁錮刑しかない罪の共謀に懲役刑を科す余地を残すつもりか?

 *法務大臣は、法制審議会には懲役と禁錮の区別をなくす「自由刑の一本化」の検討を諮問している。

 

8.オリンピック?

(1) 真の「テロ防止」のためには

 上記言語問題ほか、リクルート政策を含む警察組織の改革

 

 →「テロが世界各地で発生し日本人も犠牲となるなか、東京五輪を3年後に控える。『テロ等準備罪』の新設で組織的に行われる重大な犯罪の未然防止に資する。」とする4月19日の衆議院法務委員会における安倍首相答弁は、「テロ対策でない条約を担保する法案がなぜテロ対策なのか?」と尋ねる枝野議員の質問に対する回答になっていない。また、「テロ等準備罪」の新設が「組織的に行われる重大な犯罪の未然防止に資する。」というのは、根拠のない願望の表明に他ならない。

 

(2) 外務省・法務省のメンツ:第14回「国連犯罪防止・刑事司法会議」

 本当は、2020年の第14回「国連犯罪防止・刑事司法会議」in Tokyoまでに条約が批准できないと体裁が悪い(外務省、法務省)

 

 *アジェンダに「地域的協力を含む国際的組織犯罪対策のための国際協力」

「次回コングレスにおいては,この50年の我が国のたゆまぬ努力の結実としての国家の成熟や法の支配の浸透を是非世界中の方々に体感していただきたいと考えております。」(http://www.moj.go.jp/hisho/kokusai/hisho10_00005.html

 

 *「社会・経済問題に対処し,国家的・国際的な法の支配及び市民参加を推進するために犯罪防止・刑事司法をより広い国際連合のアジェンダへ統合することに関するドーハ宣言」の8

「我々は,締約国に対し,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約及びその付属議定書,腐敗の防止に関する国際連合条約,薬物関連3条約,並びにテロ防止に関する条約と付属議定書を履行し,より効果的に活用することを奨励し,これらを締結していない加盟国に対し,批准もしくは加盟を検討することを要請する。」

http://www.moj.go.jp/content/001161734.pdf

 

9.テロの脅威は「対テロ戦争」への参戦から

(1) 「共謀罪」のテロ防止効果?

 「共謀罪」のあるアメリカとそれがない日本とで、どちらが「テロの脅威」に晒されているか?

(2) TOC条約のテロ防止効果?

 TOC条約を批准していてもテロが頻発するパリ!←フランスの空爆

 

 

掘ゴ道觴匆颪旅獣曚砲茲觧毀嬰自由の窒息

1.密告既定の危険性

 法案6条の2第1項に「実行に着手する前に自首した者には、その刑を減軽し、又は免除する。」という密告者必要的減免の規定

 →中止や反省を評価するのではなく「裏切り」に報酬を与える制度

 →「冤罪」誘発の危険:「犯罪を計画」していないという証明の難しさ

 

2.盗聴の拡大と会話盗聴の合法化

 昨年5月の「通信傍受法」(「盗聴法」)改正による対象犯罪の拡大

 →本法案が成立すれば、それは犯罪計画段階での密告を奨励し、また、捜査手法としての盗聴の日常化をもたらす危険大

 →次の改正の焦点:会話盗聴の合法化

 →他の生活データとの組み合わせによる「総合監視」により、プライバシーが丸裸に!

 

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