「小沢事件」1審無罪判決の新聞社説と正確な意味
  久しぶりの投稿です。でも、投稿せずにはいられないことなので。

 先月(4月)26日に、東京地裁は、政治資金規正法違反で検察審査会の起訴議決により起訴されていた小沢一郎氏に対して、無罪の判決を言い渡しました。この判決は、この事件の捜査に於いて、東京地検特捜部の検事による虚偽内容の捜査報告書の作成等、検察総裁において大変な不正が行われたことも批判しており、先の厚生労働省村木被告事件における大阪地検特捜部の検事による証拠偽造を上回る、大きなスキャンダルが東京地検特捜部にあることを指摘するものともなりました。

 ところが、マスメディアの論調は、少し妙なのです。
たとえば、読売新聞の社説では、「土地購入原資の4億円の不記載などについて、判決は『小沢氏は元秘書から報告を受け、了承していた』と認定した」が、「こうした会計処理を違法であると小沢氏が認識していたことを示す立証は不十分だとして、最終的に共謀は認めなかった」と書いています。でも、これでは、まるで、記載すべき事実を記載していないことは知っていたが、それに関する違法性の認識がなかったので無罪とした、かのように読めてしまいます。
 産経新聞の社説になると、もっとはっきりします。すなわち、「『無罪』となったのは、4億円の簿外処理などの違法性を小沢元代表が認識していなかった可能性もあるとして、『疑わしきは罰せず』の刑事裁判の大原則が尊重されたためだ。」と書いています。毎日新聞の社説も同様です。そこにも、「元代表に違法な記載との認識がなかった可能性があるとして無罪の結論を導いた。」と書かれています。 
 でも、刑法38条3項は、法律を知らなかったからといって故意がないとすることはできないと書いているのです。ですから、このような論調では、まるで、東京地裁の裁判官が法令解釈を誤ったトンデモ判決だ、という誤解を与えてしまいます。
 事実は、そうではありません。この判決をよく読めばわかることですが(そして、その判決全文は、週刊ポストのHPで閲覧できるのですが)、そこには、小沢氏は、土地購入の決済が翌年に延期されたと認識していたので、本件土地の取得および取得費の支出を平成16年度の収支報告書に記載すべきであり、平成17年度の収支報告書に記載すべきでないことを、認識していなかった可能性がある、と書いてあるのです。簡単にいえば、土地は平成17年に取得したと思い込んでいたので、収支報告書にそのように書いてあっても、「虚偽」だとは認識していなかった、だから故意がない、と書いてあるのです。
 4億円の借入金についても同じです。小沢氏は、最初に秘書に渡した4億円を、自分名義で銀行から4億円を借り入れるための担保として、自分のために費消されずに確保されると誤解していたので、政治団体である陸山会の借入金とみなされ、ゆえに平成16年度の借入金として収支報告書に記載すべきだと思っていなかった可能性がある、と認定されているのです。つまり、ここでも、小沢氏には、「陸山会の借入金ではないのだから陸山会の借入金として報告書に記載すべき事実ではない」と考えていたがゆえに、不記載の故意がない、とされているのです。
 この点の指摘は、すでに、郷原信郎氏がされていますが、新聞だけでなく弁護士の中にも、無罪理由が故意の不存在ではなく違法性の錯誤であるかのように誤解されている方があると聞いておりますので、くれぐれも、そのような誤解をされないように、そしてまた、今回の指定弁護士による控訴が、見込みの薄い引き延ばしであるにもかかわらず政局を左右することにならないように、祈ります。
| 刑法 | 19:11 | - | - |
| 1/194PAGES | >>